2026/03/11 18:48

「プロ以外から見たら、どの革職人さんも大差ないように感じます。」
知り合いの方に、そう言われました。
これは悪意があっての言葉ではありません。
冷静な視点として、率直に伝えてくれたものです。
むしろ、核心をつかれた言葉でした。
違う業界の方から見たらそう見えるのは自然な事だと感じました。
どれも丁寧そうで、どれも良さそうで、どれもちゃんとしていそうに見える。
手縫い、本革、経年変化。
どのブランドも言葉や主張する事は似ている。
完成した姿だけを見れば、大きな差は分かりにくいのも当然だと思います。
革の厚み、縫い幅、コバの仕上げ、設計の考え方。
違いはあるけれど、それはパッと見て分かるものではありません。
周りからしたら誤差に見える世界です。
でも、その誤差に作り手は何時間もかける。
0.5mmをどうするか。
糸の締め具合をどこで止めるか。
革の個体差をどこまで許容するか。
外から見れば同じでも、内側では無数の判断を積み重ねています。
そして何より「使いやすいかどうか。」
カードの出し入れの引っかかり。
お札の滑り。
小銭の取りやすさ。
開いたときの角度。
そのわずかな違いは、毎日使う人の手の中では、確実に積み重なっていきます。
そこは誤魔化せません。
大差ないように見える。
それは否定ではなく、ある意味で健全なことだと思っています。
同じ素材を扱い、同じ方向を向いているなら、似て見えるのは自然なこと。
だからこそ僕たち作る人間は、見えない部分で差を積み重ねるしかない。
技術と設計と、使う人をどこまで想像できるか。
そこを磨き続けるしかない。
使い続けた先で、静かに感じてもらうもの。
そう思っています。
今日もまた、誤差に見えるその世界の中で、少しでも基準を上げるために手を動かします。
革や糸の色選び、使い方やお手入れのことなど「これってどうなんだろう?」と思ったことがあれば、気軽に聞いてもらえたら嬉しいです。

