2026/02/22 19:16
最初のオーダーは、とてもシンプルでした。
「イエローの革に、ブラックの糸」それだけでした。

でもやり取りをしていくうちに、少しずつ見えてきたものがありました。
なぜイエローの革で、なぜブラックの糸なのか。
そこにはちゃんと理由がありました。
その色の組み合わせは、お客さんの愛車をイメージしたものだったのです。
イエローはご自身の愛車のボディカラーで、ブラックは車体のブラックのパーツに合わせたイメージ。
自分の大切な愛車と同じ空気をまとった財布を持ちたい、という気持ちでした。

そこに気づいたとき、このオーダーはただの色変更ではなくなりました。
仕様もベースもウチで制作している通常の三つ折り財布ですが、意味合いがまったく違う。
「黄色い財布」ではなく「愛車とリンクする財布」という事。
やり取りを重ねる中で、お客さん自身も少しずつ言葉にしていく。
そこまで聞いて、ひとつ気になったことがありました。
たとえ今、愛車と同じイメージの色合いで仕上がったとしても、ウチで使用している革は経年変化で濃くなっていきます。
日焼けもするし艶も出る。
最初の鮮やかなイエローとは、少しずつ表情が変わっていきます。
「その変化は大丈夫だろうか」そこが少し心配でした。
けれどお客さんから返ってきた言葉は、こちらの想像よりずっと深いものでした。
経年や色落ちは「味」ですよね、と。
人もシワができて見た目は老けていくけれど、そのシワ一つひとつがその人の味や物語になる。
革も同じだと思います。
もちろん、若いころに戻りたいと思うことはあるけれど(笑)。
湿気の多い季節も、乾燥する季節も持ち歩いて、どんな風合いになっていくのかを楽しみたい。
そう言っていただけました。
最初は漠然としていたものが、やりとりの中で輪郭を持っていく。
セミオーダーの面白さは、そこにあるのだと思います。

作る側が一方的に形を決めるのでもなく、お客さんが最初から完成図を持っているわけでもない。
話しながら、すり合わせながら、「本当に欲しかったモノ」に近づいていく。
その財布は他の人からみたらただ単にブラックとイエローの財布としか見えないかもしれません。
でもそれはただの配色ではなく、その人の「好き」や「大切」にしているものの象徴でした。
作っているのは財布です。
けれど、そこに込められているのは、愛車への想いだったり、時間の捉え方だったり「変わっていくこと」への向き合い方だったりします。
完成した財布が、車のシートの上に置かれる日を想像すると、なんだかこちらまで嬉しくなります。
革や糸の色選び、使い方やお手入れのことなど「これってどうなんだろう?」と思ったことがあれば、気軽に聞いてもらえたら嬉しいです。

