2026/01/31 18:38
少し前までは人の役に立つとはあまり思っていませんでした。

人の病気を治せるようなお医者さんのような仕事でもないし。
人が困っている時に何かを代わりにやってあげるような、いわゆるサポートの仕事でもありません。
音楽や映画のように、人生の価値観を揺るがすほどの大きな影響力があるわけでもありません。
誰かの人生を救ったり、価値観を左右する仕事とは、距離があるものだと思っていました。
財布はなくても生きてはいけます。
持っていなかったからといって、明日がどうにもならなくなるわけでもありません。
だから「人の役に立つ仕事」という意味では、革製品を作ることはそれほど大した意味を持たないのではないかと、どこかでずっと思っていました。
ですが最近、少し考えが変わってきました。
たとえば片手でも使いやすい財布だったり、小銭が探しやすかったり、お札の出し入れに手間取らなかったり。
ひとつひとつは、本当に小さなことだと思います。
周りから見れば「それくらい我慢しなよ」と思われるようなことかもしれません。
それでもその小さな不便を毎日のように感じている人にとっては、決して小さなことではない場合もあります。
人が困っていることや、悩んでいることは、本当に人それぞれです。
それが大きいか小さいかは、他人が決められるものではありません。
革製品は誰かを直接助けるわけでもなく、そばについて支えるわけでもありません。
ただ生活の中に静かに入り込み、知らないうちにちょっとした不便を減らしてくれます。
それが毎日積み重なることで「これ、使いやすいな」「前より楽になったな」そんなふうに感じてもらえることがあります。
劇的に人生を変えるものではありませんが毎日使うものだからこそ、その「ちょっと楽」は案外大きな意味を持つのかもしれません。
そう考えるようになってから、革製品を作ることも、ちゃんと人の役に立てる仕事なのではないかと、思うようになりました。
誰かの暮らしの中で、そっと役に立つことができる。
だから今は誇りを持って作っています。
ものづくりとはそういう仕事なのかもしれません。


